残業手当・残業代とは、法定労働時間を超えて労働を行った際に支給される通常の賃金に一定割合がプラスされた割増賃金の事です。
法定労働時間は「労働基準法」と呼ばれる法律によって定められている法規であり、労働基準法では法定労働時間を1日8時間、1週間で40時間までと定めております。
労働時間に対するやや似ている取り決めとしては会社の就業規則で定められている「所定労働時間」がありますが、残業手当・残業代の対象となるのは「法定労働時間」のみです。
残業手当・残業代の計算の仕組みを理解するためには、まず残業手当の対象となる3種類の労働形態について把握しておく必要があるのぉ。
この3種類とはおそらく一度は耳にした事がある「時間外労働」「休日労働」そして「深夜労働」の3つじゃ。
①の時間外労働は、平日の1日8時間(法定労働時間)を超えた時間に発生する残業手当の事で、2割5分増しの残業手当が至急される決まりとなっておる。
続いて②の休日労働に関しては文字通り法定休日に労働を行った場合に発生する割増賃金手当の事じゃ。
最後に③の深夜労働は労働基準法によって定められている午後10時~午前5時までに行われる仕事時間の労働に対する対価として割増賃金が支給される決まりとなっておるのじゃよ。
割増賃金の割増率の割合は前項の①時間外労働の場合は原則として2割5分増し、②休日労働に対しては3割5分増し、そして③の深夜労働に対しては①同様2割5分増しで計算することが定められております。
ここで覚えておきたいポイントとしては、①の時間外労働、②の休日労働の場合であっても午後10時~午前5時の時間帯に労働を行った場合は、①②双方の割増率に加えて③の夜間労働の割増も適用となる点です。
その為、例えば法定休日の深夜に労働を行った場合は休日労働の「3割5分増し」に加えて深夜の「2割5分増し」が合算され結果的に経営者は「6割増しの時間給」を支払う義務が生じる事になります。
以下は、残業代・残業手当計算のベースとなる割増率をまとめた一覧表です。
深夜労働は単体である場合でも2割5分増しですが、①時間外労働と②休日労働と合わさっている場合は合算される点をしっかり覚えておきましょう。
尚、②の休日労働は、時間外労働とも考える事ができますが既に1割増しで計算されており、①と②の割増しが合算されるという概念は存在しません。
企業の場合は決算期前の多忙期に入ると、どうしても連日に渡り残業が続くようなケースも出てくるものじゃ。
しかし、労働基準法では一定期間における残業時間の限度時間が設定されており、その限度時間を超えるような残業が発生した場合は、前項の①時間外労働の割増し率を高く設定するよう定められておる。
前項の残業手当計算の割増率一覧表にあるように①時間外労働に関しては「2割5分増し」の手当をつける事が義務づけられておるのはここまでに解説してきたとおりじゃ。
しかし、1ヶ月間の残業時間がもし45時間を超えるような場合、1週間で言えば15時間、1日平均3時間の残業が強いられた場合は、労使によって45時間を超えた部分について割り増し率の引き上げを協議するように定められておる。
1日8時間労働に加えて毎日3時間の残業と言えば、一見過酷な労働環境に感じる方も多いかもしれん。
しかし現実的には決して珍しい話でもなく、1ヶ月45時間を超える残業をしているケースも多いのではないじゃろうか?
思い当たる節がある場合は、一度自分の労働時間を正確に記録してみると良いじゃろう。
※1ヶ月45時間を超える残業があった場合は、協議によって割増し率を引き上げる事が可能
1ヶ月の残業時間が60時間を超える場合は、原則として5割増しの時間給を支払うことが義務付けられております。
45時間以上の場合は協議によって割増し率を高くする事が可能ではありますが、おそらく現実的にそのような協議を行える方はほとんどいないのが現状と言えるでしょう。
しかし1ヶ月の残業が60時間を超えている事を証明できる場合は、労働基準法の「時間外労働の限度に関する基準」を元に残業手当として5割り増しの請求を行うことが可能です。
とは言え、このような規定が制定されていたとしても、やはり現実的に残業手当を自ら請求するのは色々な意味で難しいものがあります。
もし過剰なまでの残業や時間外労働、休日労働を強いられている場合は、その記録を正確に残し「労働基準監督署」に相談してみることをお勧めします。