児童手当とは、子育て世代の教育費支援を目的として子供の人数や所得額によって一定年齢まで該当する手当金を支給する制度の事です。
児童手当は従来の制度よりも手厚い補助を行う事を目的とした「子ども手当」へと名称が変更され、現在は再度「子ども手当」から「児童手当」へと名称が戻っております。
しかし、名称は以前の児童手当へ戻ったにも関わらず、その内容は以前の制度とは異なっている為、やや混乱し解りにくい制度となっているのが現状です。
特に所得制限によって支給額が変更となる点は大きな変更点とも言えるため、しっかり把握しておく必要があります。
子育て世代には欠かせない児童手当じゃが、実際にどの程度の金額の支給を受けることが出来るのじゃろうか?
ここからは実際に児童手当によって支給される金額についてチェックしておくとしよう。
児童手当金額は、まず子供の年齢、子供の人数、そして最後に所得制限によって支給金額が変動することを覚えておく必要があるのじゃ。
児童手当の支給対象となる年齢は前項の児童手当金額一覧表にも記載している通り「0歳~中学生までの児童」が支給対象範囲となっております。
具体的な上限年齢は、子どもが15歳に到達した後の最初の3月31日まで(3月分まで)が児童手当の対象児童として認められております。
児童手当の支給に関しては扶養人数に対する「所得制限限度額」が設定されておる。
この所得制限の設定は低所得者層~中所得者層と比較すると高額給与所得者はゆとりのある教育が実施可能であるという観点から児童手当金額を減少させる為の措置なのじゃ。
上図に記載しておる所得制限額は会社の給与明細の総支給額ではなく、源泉徴収票に記載されている項目の一つである「給与所得控除後の金額」から社会保険料相当額として設定されている「8万円」を差し引いた金額となっておる。
⇒給与所得控除の計算方法の解説はこちら
尚、上図では扶養人数0人の欄があるが、これは所得制限限度額が手当を受けとる者の前年の12月31日時点の扶養人数で計算される為なのじゃ。
もし所得制限限度額を超える収入を得ている場合は、満額の給付を受けることはできないが、「特例給付金」として児童1人につき月額5000円の手当を受けることが出来るようになっておる。
例えば父がサラリーマン、妻が専業主婦で小学生の児童二人の4人家族のモデル世帯の場合は年収によって児童手当の金額が以下の図のようになるので確認しておくとしよう。
児童手当金額一覧表をチェックすると小学生の児童手当は1万円じゃ。(第三児からは1万5千円)
その為、Aの所得額600万円の世帯は1万円×2で毎月2万円の児童手当の支給となる。
しかし、Bの所得額720万円の世帯は所得制限限度額の698万円を超えているため「特例給付金」の支給のみとなり、5千円×2で毎月1万円の児童手当の支給となる訳じゃ。
特例給付金が支給されるようになったのは、所得制限を超える所得者への給付がなされなかった従来の児童手当制度時とは違い、年少扶養控除が廃止となり所得税・住民税が増税となり実質的に所得が減少してしまう状況が発生したことが背景にあるのじゃよ。
児童手当の所得制限限度額は前述したように「扶養人数」に応じて所得制限額が異なってくる点がポイントじゃ。
しかし、この所得制限限度額の計算で使用する所得額は共働き世帯の場合どのように計算するのか気になっておる方も多いのではないじゃろうか?
結論から言えば、共働き世帯の児童手当の所得制限に関する所得額の算出は、収入を合算するのではなく生計を維持する程度が高い方の所得を基準として計算する事と定められておる。
子供がどちらの健康保険に属しているのか?などの要素も考慮されるが、この「生計を維持する程度」という言葉が意味するものはシンプルに所得が高い方が児童手当の所得額計算の基準となることを意味しておる。
夫婦共働きで収入がほぼ同額の場合など判断に困るようなケースでは管轄エリアの市役所で一応確認しておくとよいじゃろう。
尚、夫婦共働き世帯が大半を占めるようになった現在の日本では、この所得制限限度額の対象が世帯収入を基準とせずに、一方の収入のみを対象とする事で新たな問題を生み出しておる。
例えば子供4人の6人家族で旦那の所得額が1000万円、妻は専業主婦という世帯の場合。
対して、同じ子供4人の6人家族で夫婦共働きで共に500万円の所得額がある世帯の場合を比較してみるとしよう。
どちらも一世帯の所得額は1000万円となるが、前者の専業主婦の世帯の場合は子供4人とも所得制限の対象となる。
しかし、後者の共働きの世帯の場合は世帯所得は同じ1000万であるが、所得額が500万円が所得制限の算出基準となるため子供4人とも所得制限の対象とならない訳じゃ。
世帯収入が同額であっても所得制限がかかる世帯とかからない世帯があるというのが現在の児童手当制度の実態という訳じゃな。
尚、所得税の税率表を見ても解る通り、年収に応じて税率が高くなる累進課税制度を採用しておる日本では所得は旦那一人で得るよりも共働きで2人に分散した方が同じ世帯収入を得ている場合、納税額がかなり低くなる。
これらの現状を踏まえても共働き世帯に有利な税法や規程が多くあることを覚えておく事は大切じゃ。
※児童手当は所得制限が制定された為、実質的に共働き世帯が圧倒的に有利な仕組みとなっている
児童手当の計算は子供の年齢と人数によって毎月の支給額が決定されますが、実際の手当金の支給は毎月ではなく年3回の分割給付となっております。
具体的な支給月は以下のようになっております。
児童手当の支給月は6月・10月・2月の年3回で、毎回4ヶ月分の合計金額が手続き時に指定した口座に一括で振り込みされます。
次回の支給月がいつかを覚えておくには上図の「支給月の覚え方」をイメージと合わせて暗記しておくと思い出しやすいかと思います。
では、ここからは具体的に養育状況に応じた児童手当金額の支給額を算出してみましょう。
■3歳・6歳の子供を養育しているケース
この場合は6歳の子供が第1子、3歳の子供が第2子です。
前述した児童手当金額一覧表を確認すると支給対象年齢区分では2人とも「3歳~小学校修了前」に該当する事が解るため、児童手当支給金額は以下のようになります。
第1子(6歳)=10,000円
第2子(3歳)=10,000円
月額20,000円
■2歳・10歳・14歳の子供を養育しているケース
続いての事例は子供が3人のケースです。
自分でも簡単に計算できるようになりますので児童手当金額一覧表を確認し、ご自身でも一度計算してみてから続きをみて下さい。
では、解答です。この場合は14歳の子供が第1子、10歳の子供が第2子、2歳の子供が第3子です。
支給対象年齢区分では「0歳~3歳未満」及び「3歳~小学校修了前」及び「中学生」に該当するため、児童手当支給金額は以下の通りです。
第1子(14歳)=10,000円
第2子(10歳)=10,000円
第3子(2歳)=15,000円
月額35,000円
正解できましたでしょうか?
■3歳・10歳・14歳の子供を養育しているケース
続いては前項の事例と似ておりますが、支給対象年齢区分の中で唯一第3子に限り手当金が増額となる範囲を含む計算事例です。
この場合は14歳の子供が第1子、10歳の子供が第2子、3歳の子供が第3子です。
支給対象年齢区分では「3歳~小学校修了前」及び「中学生」に該当し第3子の子供が「3歳~小学校修了前」に該当するため、10,000円ではなく15,000円となり児童手当金額は以下の通りとなります。
第1子(14歳)=10,000円
第2子(10歳)=10,000円
第3子(3歳)=15,000円
月額35,000円
最後に第3子と認定される基準の注意点についてチェックしておきましょう。
お子さんたちの年齢が離れているご家庭の方は意外と知られていない部分ですから確認が必要です。
■11歳・14歳・19歳の子供を養育しているケース
この場合は19歳の子供が第1子、14歳の子供が第2子、11歳の子供が第3子です。
支給対象年齢区分では「3歳~小学校修了前」及び「中学生」に該当し第1子の子供は児童手当支給の対象とはなりません。
ここまでは、特に問題なく確認できるかと思います。
しかし、ここで覚えておきたいポイントとして児童手当制度では18歳の誕生日後の最初の3月31日を超える年齢の子供に関しては計算上第1子と数えない規定が定められている点です。
ですから、この事例のケースでは児童手当の計算上においては19歳の子供ではなく、14歳の子供が第1子、そして11歳の子供が第2子となります。
第1子(14歳)=10,000円
第2子(11歳)=10,000円
月額20,000円
この事例のケースでは実際は11歳の子供が第3子ですから15,000円と計算しそうになりますが、児童手当の計算上では19歳の子供が第1子と数えない為、第2子となる点が注意すべきポイントです。